コンサルタントや会計職(税理士・公認会計士・会計コンサルタント)を目指している学生のみなさん向けに、日本経営グループのリクルーターや採用担当者が、採用活動の舞台裏や就職活動に役立つ情報などを発信していきます。

おすすめの本 Vol.8『「学力」の経済学』

弊社では、お客様向けの広報誌にて、読んだ本のご紹介(ブックレビュー)を行っています。
紹介では、本の内容だけでなく、読んで得た気付きなどを記載しており、コンサルタントとしての視点を必ず盛り込むようにしています。

今回は『「学力」の経済学』 著:中室牧子

子どもの教育についての著書ですが、その本質は人材育成に通じるものがあります。
興味のある方は、ぜひ、読んでみてください。

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「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないの?」「子どもはほめて育てるべきなの?」「ゲームは子どもに悪い影響があるの?」このような子どもの教育に関する事項は、その是非について多くの書籍が出版され、テレビ等でもよく議論されている。私も子を持つ親として、非常に関心の高いことではあるのだが、その多くが教育評論家や子育ての専門家と呼ばれる人たちの個人的な経験に基づく主張であったり、例外的な個人の体験談をあたかも一般的であるかのように論じたものである気がして、どうも腑に落ちないと感じていた。そんなときにふと書店で目に留まったのが今回ご紹介する著書である。本書は、教育経済学者である著者が、科学的根拠に基づいて教育問題の是非を語るという新しい切り口での教育指南書である。

冒頭で述べた「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないの?」という、目の前ににんじん作戦は、教育においてもよく議論される問いであるが、実は人事制度の設計においても、同じような議論がしばしば展開される。「職員のモチベーションを上げるために、金銭的インセンティブを設けるかどうか」ということだ。

経済学はこの問いについて、科学的根拠に基づく答えを持っているという。

「今ちゃんと勉強しておくのが、あなたの将来のためなのよ。」恐らく多くの親が口にしたことがあるはずのこの言葉は、経済学的にも正しいことが証明されている。今ちゃんと勉強しておけば、将来の収入が高くなることは数字で示されているにもかかわらず、なぜ子どもたちは、目の前にご褒美がなければちゃんと勉強しないのだろうか。

実は、人間にはどうも目先の利益が大きく見えてしまう性質があり、それゆえに、遠い将来のことなら冷静に考えて賢い選択ができても、近い将来のことだと、たとえ小さくともすぐに得られる満足を優先してしまうのだという。そのため、子どもたちは、遠い将来のことを考えればちゃんと勉強したほうがよいことはわかっているのに、つい勉強せずに楽をするという近い将来の満足を大切にし、その結果「勉強するのは明日からでいいや」と先送りにしてしまうのだ。こういった先送り行動は子どもだけにみられるものではなく、大人にだって少なくないことだ。

医療機関で考えると、「病院の収益が上がれば将来的に自分の給料に反映されることはわかっていても、今日は早く帰りたいから急患の受け入れは断ってしまおう」等がこれに当てはまるのではないだろうか。

目先の利益や満足をつい優先してしまうということは、裏を返せば目の前にご褒美をぶら下げられると、今、行動することの利益や満足が高まり、それを優先するということでもある。実は、にんじん作戦はこの性質を逆に利用して先送り行動を抑制する戦略なのだ。

しかしながらこのにんじん作戦、どこに対してインセンティブを与えるかどうかが非常に重要であり、それを間違えると効果を発揮しないどころか、逆効果になってしまうこともある。そのポイントについても本書には書かれている。

本書は子どもの教育についての著書であるが、その本質は人材育成に通じるものがある。私と同じく子育て奮闘中の方に限らず、人材育成の参考書として、ぜひ本書を手にとっていただきたい。