Project 02
深刻化する
「看護師の離職ラッシュ」を
止められる?
多くの病院で、「看護師の離職防止」が喫緊の課題となっている。特に現場を率いる主任クラスの離職は、周囲への負担増加や人材育成という点からも大きな痛手だ。
慢性的な人材不足/コロナ禍による業務過多/タスクシフトによる業務範囲の拡大――など、負担集中が指摘される看護現場。 組織人事コンサルタントが現場を通して見た、看護師が離職に至る「本当の理由」とは?
PROJECT MEMBER
プロジェクトメンバー
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ゼネラルマネージャー職
組織人事コンサルティング部
2020年入社 -
ゼネラルマネージャー職
組織人事コンサルティング部
2005年入社
PROJECT STORY
プロジェクトストーリー
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「助けて!」看護師の離職が止まらない
「コロナ対応で医療現場が疲弊しきっている。特に看護師の離職に歯止めがかからない」――悲鳴のような相談が、いまだ引きも切らない。離職防止のカギを握るのは業務改善と負担軽減。それは病院側もいやというほど理解しているが、どこから手を付ければいいのか見当もつかないという。それほどまでに業務量が膨れ上がり、複雑化してしまったのだ。
実を言うと、離職防止の有効な打ち手はかなり確立されているし、広く知られてもいる。にもかかわらず、成功例は決して多くない。理由は、病院が抱える事情や体制によって有効なはずの打ち手が無力化してしまうケースが少なくないからである。
今回のクライアントは全国屈指の大病院。組織を挙げて業務改善に臨んだが、効果を実感する前に行き詰まってしまったという。 -
まずは現場に向き合う
業務改善プロジェクトが始まった。最初にやることはいつも決まっている。
「現場を理解すること」だ。今回は私たちに加え、病院の上層部も日中・夜間の現場に立ち会った。そこで見たものは常に小走りで業務に追われ、頻繁に探し物をする看護師たち。
20時まで目一杯奔走し、疲れ切った様子で記録を終えて帰路に着いたと思ったら、翌朝7時にはまた出勤して始業前の準備に追われる姿だった。上層部メンバーは、最初に思い描いていた「答えと実態」との乖離を目の当りにした。
「現地現物」――字のごとく、現場に足を運び自分の目で事実を確かめること。
上層部とコンサルタントがともに現場視察をすることで、現場の看護師とは異なる視点の気づきが生まれる。それを現場の意見とすり合わせることで、実用的な改善計画が紡がれていった。 -
「視点の転換」と「コンサルタントの本領発揮」
医療現場が疲弊してくると、そのことを気遣う師長が一人で問題を抱え込んで解決を試みるケースが増える。今回のプロジェクトでは、それを阻止することに決まった。
具体的には、「師長の不徳のいたすところ」とみなされていたスタッフの離職問題を「病院全体の責任」と捉え直して、改善に乗り出すことにしたのだ。
現場管理を師長の能力や努力頼みにする病院は非常に多い。しかし個人のキャパシティでカバーしきれるものではなく、責任感の強い師長ほど先に燃え尽きていく。
そこで本領を発揮するのが、「上層部・看護師・多職種スタッフが共通の目的のもと協働するために場を設け、ファシリテーションする」役割を担うコンサルタントである。 -
現場から人が去る「本当の理由」
「心身の疲弊を理由に病院を辞める」というのは、あくまでも事象に過ぎない。医療や看護を志した人たちが現場を去る本当の理由は、『やりたい看護ができない現実』と『やりにくさや現状が変わらないことの閉塞感』なのだ。これは、新人でも中堅でも管理職でも同じことがいえるだろう。
コンサルタントにできることは、現場スタッフそれぞれの力を誰よりも信じながら、変化を後押しすること。すなわち有効な改善計画を立て、推進のお膳立てをし、実行に伴走することである。
スタッフ一人ひとりの力が引き出されると、現場は劇的に活気づく。リーンコンサルティングはたしかに多くのパワーと調整リソースを投下するが、その分現場の良い変化を肌で感じられる「ご褒美の多い仕事」かもしれない。